乳房再建に関する正しい情報を提供する

乳房再建ナビ

乳房再建術とは

SubMenu

コラム 遺伝性乳がんについて

  • 前へ
  • 次へ

2020年の診療報酬改定において、『遺伝性乳癌卵巣癌症候群患者に対する乳房切除術』が保険適用となり、それに伴う乳房再建も保険で行えるようになりました。
遺伝性乳がんについて、昭和大学病院 乳腺科長 教授 中村清吾先生にご執筆いただきました。(2020年11月)

遺伝性乳がんとは?

乳がんの5~10%はがんのかかりやすさに強く関わる特定の遺伝子の変化がある遺伝性の乳がんと考えられています。

遺伝性の乳がんの原因となる最も代表的な遺伝子として、BRCA1・BRCA2という2つの遺伝子が知られています。BRCA1・BRCA2は誰もが持っている遺伝子です。

遺伝性乳がん卵巣がん症候群

BRCA1・BRCA2という遺伝子に、乳がんの発症に関わる変化(病的変異)がある場合には、一般よりも、乳がんや他の特定のがんにかかる可能性が高いことがわかっています。(乳がんや卵巣がんが必ず発症するわけではなく,一生がんを発症しないかたもいます。)

この体質を「遺伝性乳がん卵巣がん症候群(HBOC:Hereditary Breast and Ovarian Cancer)」といいます。

乳がん・卵巣がんにかかる可能性【遺伝性乳がん卵巣がん症候群の場合】
性別ごとの乳がん・卵巣がんにかかる可能性

乳がん発症の発がんリスクは遺伝子変異がない方と比較すると最大10倍と考えられています。
※前立腺がん、すい臓がん発症の可能性の増加を示す報告もあります。

『遺伝性』だからといって、必ず遺伝するものではありません

遺伝性乳がん卵巣がん症候群(BRCA1,BRCA2遺伝子の変異)は、親から子には男女関係なく1/2(50%)の確率で伝わると言われています。

BRCA1・BRCA2の遺伝子検査を行うことで、ご本人が 「遺伝性乳がん卵巣がん症候群」であるかどうかを確認することができます。

検査の結果、「遺伝性乳がん卵巣がん症候群」と診断された場合には、その体質に合った対策(検診を定期的かつ適切な頻度で受けることにより、がんの早期発見に努める。がんのリスクを減らすため予防的切除術を行うなど)を考えていくことができます。

BRCA1・BRCA2の遺伝子検査について

2020年の診療報酬改定によって、乳がんまたは卵巣がんを発症した方は BRCA1・BRCA2の遺伝学的検査および遺伝カウンセリングが保険診療で受けることができるようになりました。
また、乳がんを発症していない対側の乳房のリスク低減乳房切除術(RRM : risk reducing mastectomy)と乳房再建術、およびリスク低減卵管卵巣摘出術(RRSO : risk reducing bilateral salpingo-oophorectomy)も保険診療となります。

ただし、乳がん・卵巣がんを発症していない方は、近親者が遺伝性乳がん卵巣がん症候群であっても、BRCA 遺伝学的検査と遺伝カウンセリングは自費診療となります。

遺伝子に乳がんの発症に関わる変化があることをネガティブに捉える必要は決してありません。遺伝子の情報を得ることにより、個人の体質に合った具体的な対策を考えることができるようになってきています。

遺伝性乳がんが疑われる方は遺伝カウンセリングを受け、カウンセリングの結果、ご本人の意思によって検査を受けるかどうかを決めることができます。
遺伝子検査を受けないことを選択される方もいらっしゃいます。
自分らしい選択や行動ができるように、遺伝カウンセリングがあります。

BRCA遺伝学的検査の保険診療と自費診療について

保険適応となるのは、乳がん既発症例の中では、以下のいずれかの項目に当てはまる方が 対象です。

  1. 45 歳以下で乳がんを発症した
  2. 60 歳以下のトリプルネガティブ乳がん
  3. 2 個以上の原発乳がん発症
  4. 第 3 度近親者内に乳がんまたは卵巣がん発症者がいる
  5. 男性乳がん
  6. 卵巣がん、卵管がんおよび腹膜がん既発症例

※ 従来からの PARP 阻害薬に対するコンパニオン診断の適格基準を満たす場合に保険適用となります。
上記以外の場合は、すべて自費診療となります。

  • 前へ
  • 次へ

病院検索 お近くの医療機関をご紹介します

<参考・協力>福田 護ほか:ピンクリボンアドバイザー認定試験公式テキスト
『ピンクリボンと乳がんまなびBOOK』発行/社会保険出版社 発売/主婦の友社,2013