乳がんの罹患率と死亡率
乳がんの罹患率と死亡率
乳がんは、がんのなかでも、日本女性がかかる割合(罹患率)がトップであり、その罹患率は増加の一途をたどっています。生涯のうちに乳がんになる女性の割合は、50年前は50人に1人でしたが、現在は14人に1人 と言われており、年間6万人以上が乳がんと診断されています。また、乳がんで死亡する女性の割合も年々増加の傾向にあり、年間約1万3,000人が亡くなっています。これは乳がんを発症した人の30%程度にあたります。
図1 日本女性における乳がんの年齢調整罹患率・死亡率の推移
<出典>独立行政法人国立がん研究センターがん対策情報センター:地域がん登録全国推計によるがん罹患データ(2008年)、及び人口動態統計によるがん死亡データ(2012年)より作成
年代別でみると、乳がんの罹患率は30歳台後半から増加し始め、40歳台後半から50歳台前半でピークになります。これは、乳がんが、女性の働き盛りを襲う疾患であることを示しています。
さらに、閉経後の60歳台前半で再びピークを迎える傾向があります。かつて日本の乳がんは、欧米と異なり閉経前が多いことが特徴でしたが、近年は欧米のように閉経後も増加しています。
また、まれですが20歳台でも乳がんにかかることがあります。日本ではマンモグラフィ検査による乳がん検診は放射線被ばくの議論もあり40歳以上に推奨されているため、それより若年層では乳がんの早期発見が難しく、病状が進んだ状態で診断されることが多くなっています。早期発見のためには、30歳台後半から超音波検査による検診や、視触診による自己検診を習慣づけるなどの注意が必要です。
図2 日本女性における乳がんの年齢階級別罹患率・死亡率
<出典>独立行政法人国立がん研究センターがん対策情報センター:地域がん登録全国推計によるがん罹患データ(2008年)、及び人口動態統計によるがん死亡データ(2012年)より作成
乳がんが増加した理由
近年、日本女性に乳がんが増加した主な理由として、食生活の欧米化や、女性の社会進出があると考えられています。乳がんの原因ははっきりと解明されていませんが、女性ホルモンの1つであるエストロゲン(卵胞ホルモン)は乳がんのがん細胞を増殖させることが知られています。食生活の欧米化に伴い、高タンパク・高脂肪の食事が増えて体格が良くなった結果、初潮が早く閉経は遅い人が増えました。さらに、女性の社会進出の増加によって、妊娠・出産を経験する人が減少し、女性が生涯に経験する月経の回数が多くなりました。月経中はエストロゲンが多量に分泌されるため、この回数が増えたことが、乳がんの発生と進行に影響を及ぼしている可能性があります。