インプラントによる乳房再建に特有の注意・ケア
インプラントによる乳房再建後の具体的なケア方法や注意点について詳しく解説します。エキスパンダー(皮膚拡張器)の違和感への対策や手術後の動作制限、傷の洗浄方法、補正パッドの使用、定期検査の重要性など、再建後の生活を快適に過ごすための情報を提供します。
エキスパンダーの違和感
エキスパンダーに生理食塩水を注入すると、皮膚や組織が引き伸ばされるため、張り感や痛みが起こります。皮膚や組織が伸びてくると楽になりますが、生理食塩水を追加する度に張り感は現れます。寝るときに真上を向くのが苦痛な場合は、横を向くなど姿勢を変えたり、背中にクッションを入れたりするなどの工夫をするとよいでしょう。また、痛みがひどい場合は、医師に相談して注入した水を抜いたり、一時的に鎮痛剤を使用したりすることもあります。
手術後の動作制限
乳がんの手術と同時に乳房再建をする場合は、エキスパンダーの挿入後1ヵ月程度は、エキスパンダー周囲に滲出(しんしゅつ)液が溜まったり、患部が感染したりするのを防ぐため、腕を挙げる、胸をゆらすなどの激しい動作はせず、圧迫する必要があります。
エキスパンダーの固定
乳がんの手術と同時に乳房再建をする場合は、エキスパンダーを挿入している間は、ソフトタイプのブラジャーや胸帯、さらしで圧迫して、エキスパンダーがずれないように固定します。自分に合ったものを上手に工夫して、形のよい乳房に仕上げていきましょう。現在使用されているエキスパンダーには、固定用のタブがついているため、以前よりも固定の必要性は少なくなりました。
傷の洗浄
手術後の傷は、感染を防ぐためきちんと洗い、清浄に保つ必要があります。エキスパンダーの挿入後は皮膚の感覚が鈍くなるため、汗で蒸れるなどして不衛生になっていても気づきにくいことがあります。毎日、胸を観察する習慣をつけましょう。自分で傷口をみるのがつらい場合には、家族や看護師などに協力してもらうとよいでしょう。
補正パッド
エキスパンダーを入れた側<再建側>の乳房は、インプラント(人工乳房)に入れ替えるまでに、反対側<健側(けんそく)>の乳房より大きく拡張させるため、左右の差が著しくなる時期があります。その際には、健側に補正パッドを使う、胸のラインが出ない服を着るなどの工夫が必要になります。
インプラント入れ替え後の固定
エキスパンダーからインプラントに入れ替えた後、1週間程度はソフトタイプのブラジャーや胸帯で固定する必要があります。その後、抜糸をすれば通常の生活ができるようになります。
乳房再建後の定期検査
乳房再建の有無にかかわらず、乳がんの手術後には、医療機関で定期検査を受け、経過観察を行う必要があります。定期検査で異常が発見された場合は、必要に応じて血液検査や画像検査を受け、その後の治療方針を検討することになります。詳細は定期検査の重要性をご参照ください。
特に、インプラントによる乳房再建の場合は、約2年に1回はインプラントの変形や破損などがないかを調べる目的で、MRIまたは超音波による検診を受ける必要があります。