抗がん剤療法(化学療法)
抗がん剤療法(化学療法)
抗がん剤療法は、抗がん剤が直接がん細胞に作用して死滅させる薬物療法です。乳がんは、がんのなかでも、比較的抗がん剤療法が効きやすいことが知られています。手術後、実際に抗がん剤療法を行うかどうかは、乳がんのサブタイプや、しこりの大きさ、リンパ節転移の数、がん組織の悪性度などによって決定されます。
乳がんの抗がん剤療法で使われる主な薬剤を、下の表にあげます。術後の抗がん剤療法では2~3種類の薬剤を組み合わせて同時に使用する多剤併用療法が一般的です。主な投与方法は点滴で、そのほとんどは外来で行われ、1回の治療時間は2時間前後です。治療の頻度と期間は薬剤の組み合わせによって異なりますが、1~4週間ごと、3~6ヵ月程度かかるのが一般的です。
分類 | 薬剤名 | 投与方法 |
---|---|---|
アルキル化剤 | シクロフォスファミド | 点滴、経口 |
代謝拮抗剤 | フルオロウラシル テガフール・ウラシル ドキシフルリジン カペシタビン テガフール・キメラシル・オテラシル・カリウム合剤 メトトレキサート |
点滴、経口 |
抗がん抗生物質 | エピルビシン ドキソルビシン マイトマイシン |
点滴 |
植物由来 | パクリタキセル ドセタキセル ビノレルビン イリノテカン nab-パクリタキセル エリブリン |
点滴 |
<出典>福田 護ほか:ピンクリボンアドバイザー認定試験公式テキスト『ピンクリボンと乳がんまなびBOOK』 発行/社会保険出版社 発売/主婦の友社, 2013 より改変
抗がん剤療法の長所は、がん細胞を直接攻撃して死滅させられること、短所は全身の正常な細胞まで攻撃してしまうため副作用が強いことです。抗がん剤にほぼ共通する主な副作用としては、吐き気・嘔吐、脱毛、貧血、出血、感染症などがあげられます。
分子標的療法(抗HER2療法)
分子標的療法は、がん細胞を増殖させる働きをもつ分子を狙い撃ちする薬物療法です。
乳がん治療の分子標的療法で使われる主な薬剤は、トラスツズマブといいます。患者さんの15~20%では、がん細胞の表面に「HER2(ハーツー)タンパク」というタンパク質があり(「HER2陽性」といいます)、このHER2タンパクによって乳がん細胞の増殖が促されると考えられています。トラスツズマブはHER2タンパクを標的に攻撃することで、がん細胞の増殖を抑えます。トラスツズマブの投与は3週間に1回、1年間、抗がん剤と併用して点滴で行います。
トラスツズマブによる分子標的療法の長所は、正常な細胞に影響が少ないため副作用が軽いこと、短所はHER2陽性の乳がんでなければ使用できないことです。主な副作用は発熱・悪寒で、約40%の患者さんに、ほとんどは初回投与時のみ起こります。なお、重篤な副作用として、ごくまれ(2~4%)に心臓機能の低下が起こり、息苦しさ、疲れ、手足のむくみなどが現れます。
<参考・協力>福田 護ほか:ピンクリボンアドバイザー認定試験公式テキスト
『ピンクリボンと乳がんまなびBOOK』発行/社会保険出版社 発売/主婦の友社,2013